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大興印刷の設備など、より詳しく解説するページです。

特殊印刷・後加工について4

広辞苑によると、インク(ink)とは、オランダ語のinktから派生した言葉で、一般の筆記または印刷に用いる有色の液体とあります。
初期のインクは鉱物や種子、豆などの殻、イカの様な海洋生物から採られる天然染料が主なもので、墨は黒色でアジアが発祥です。没食子インク(Iron gall ink)は古来の図面に多く用いられ、ウォルナット・インクは巨匠達の名作にも使用されたと考えられますが、その証拠は存在しません。もしウォルナット・インクが使用されたとすれば、それはすぐに退色したと考えられます。
一方、印刷インキでは、1446年ルネサンス期グーテンベルグ(ドイツ)が活版印刷術を発明したときから始まり、500年以上の歴史から、日本には、オランダから伝承されてきたのが由来とされています。

無線綴じ

顔料インクは、顔料を溶剤に分散させたインクで、印刷面に顔料が付着することで印刷が行われます。顔料インクは比較的耐水性に優れ、屋外用途などに多用され、ジェル状インクは摩擦、耐水性に特に優れているのです。

あじろ綴じ

染料インクは、染料を溶剤に溶かしたインクで、顔料インクに比べて多くの色を作り出すことができます。印刷面に浸透することで印刷が行われるが耐水性、耐光性は顔料インクに比べ劣ります。

 

印刷用のインキは顔料、媒剤、添加剤からなり、印刷素材や版の形式などから高粘度のジェル状のもの、低粘度の液状のものが存在します。グーテンベルクが15世紀に活版印刷を開発したのに合わせて、筆記用の液体インキとは異なった版に付着できる高粘度のインキが開発されました。現在でも大量発行を目的とした商業印刷において使用されるインキは、高粘度のジェル状インキが多用されます。近年では、環境に対応したインキとして大豆油インキが多用されており新聞インキ、平版インキの64%に使用されています。

 

およそ5000年前に、石の表面に絵や文字を刻むための黒色インクが中国で開発されたインクは、油煙や松煙と膠の混合物。他地域の初期文明においても植物の実や種、鉱物から様々な色のインクが作り出されました。
墨は古代インドで紀元前4世紀から使用され、いくつかの化学成分の混合物でした。カローシュティー文字で記述された古文書が新疆ウイグル自治区で発見されています。インド南部においては、針とインクを使って文字を書くことは一般的で、いくつかのジャイナ教の教典はインクによって記述されています。インドでは墨の煤を骨やタール、ピッチなどを燃やすことで得ていました。
古代ローマではアトラメンタム(atramentum、銅板に熱した酢か尿をかけることで得られた緑礬色)が用いられ、シャロン・J・ハンティントンはクリスチャン・サイエンス・モニターの記事でその他の歴史上のインクについて記述しています。
当時、エジプトのカリフ、ムイッズは手や衣服を汚すことのないペンを要求し、その要求に応えて953年に万年筆の原型といえるペンが開発されたのです。
15世紀にグーテンベルクが活版印刷を実用化することに成功すると、それに適した新しいタイプのインクが開発されることとなり、ギリシャ・ローマの筆記用インク(煤と糊、水から成る)および12世紀に開発された硫酸鉄、胆汁、ゴム、水から成る2種類のインクが普及しておりこれらはどちらも版面に付着せず、印刷には適しませんでした。結局、煤、テレピン油およびクルミ油からなるニス状のインクが印刷機用に開発されたのです。
現在では、万年筆はいまでも使われていますが、カートリッジ式のものがほぼ主流になりつつあるため、万年筆の使用にあたって“インク”というものを一般人が日常で意識することは少なくなりました。
また、ホーム・コンピューティングの普及により、インクジェットプリンターを用いた印刷が家庭でも一般的となり、プリンター用インクカートリッジの購入は、約50年前に、ペン用の補充インクボトルを購入するのと同じようになりました。

 

 

 

 

印刷インキは、大別して顔料とワニス(ビヒクル)を主剤とし、これに若干の添加物(補助材)を加えた3つの要素からなっています。
顔料は印刷物の色再現に重要な役割を果たしています。
ワニスは油脂類、天然樹脂、合成樹脂等を溶剤に溶かしたもので、顔料を分散し、印刷素材に転移、固着させる働きをします。
添加剤は乾燥性や流動性等いわゆる印刷適性や印刷効果を調整する機能があります。
これらの原料は、天然物から石油化学製品に至る多種多様な物質で、用途適性に応じて使い分けられています。現在では環境に配慮した石油化学製品や、大豆油などの植物油を印刷インキの成分として利用しています。

 

大豆油インキは、アメリカで1970年代後半のオイル危機以降、石油系溶剤に代わる植物油に着目され、環境の保護のため設定された「揮発性有機化合物規制」にも応えるために開発されたインキです。1980年代後半より印刷インキに使用出来るものとして大豆油が普及しはじめ、環境対応の面でも見直され、揮発性有機化合物(VOC)が削減することから、大気汚染の防止に役立つなど環境安全性が保たれます。植物油ですから安定した永続的な生産が可能で、限られた化石燃料の枯渇も防ぎます。

 

インキに含まれる石油系溶剤を大豆油に置き換えることで、有機溶剤を大幅に削減し大気や作業環境に最適なインキです。通常、「石油系溶剤」は、VOC(揮発性有機化合物)成分を含んでおり、大気汚染、人体への悪影響を及ぼします。「石油系溶剤」を減らし、環境や人にも優しいインキとして、近年、環境対応に前向きに取り組んでいる国や市町村・企業は、環境に優しい印刷物にと大豆油インキを指定するようになってきています。

 

VOCとは「揮発性を有し、大気中で気体状となる有機化合物の総称」で、トルエン、キシレン、酢酸エチルなどもVOCの一種です。これらは大気汚染の原因ともなり、排出削減が求められています。構成成分中のVOCを植物油などに置き換えて、1%未満に抑えたインキのことをノンVOCインキといいます。植物油インキよりもさらに進んだ環境に優しいインキで、主に枚葉平版インキで実用化されています。

 

UVインキは、紫外線(UV)の照射でインキが硬化・乾燥して強固な皮膜を作ります。このインキはVOC成分が極めて少なく、大気環境保全に優れた環境対応型インキです。UVインキは脱墨しにくいため古紙再生処理に適さないと言われてきましたが、通常の平版インキと同じように脱墨しやすいリサイクル対応型UVインキが提供されるようになりました。

 

お菓子、インスタント、冷凍、レトルト食品などの袋は、プラスチックフィルムにグラビア印刷されています。多くの種類のプラスチックフィルムが用途に応じて使い分けされているため、特殊グラビアインキは、多種多様の樹脂や溶剤が使用されてきました。中でもトルエンはインキの性能や印刷適性がよいことから、使用されていますが、一方では、トルエンは大気汚染の原因ともなるため、作業環境の管理濃度が20ppmまで引き下げられています。その排出を極力抑えるため、インキのノントルエン化が進むことが予想されます。

 

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